うっせえよ!
化粧が終わり、ヒールを履く頃には12時半を過ぎていた。
きっと明美はカンカンに怒っていることだろう。店まで歩いて行けるほどの距離で安心した。
アパートの通りでタクシーを拾った。1メーター内で行ける距離なのだが、歩いていけば、打ち合わせが嘘だということが明美にバレてしまう。
嘘をつくなら十分すぎるくらい周到に。これはジンクスというよりは、モットーに近い。
案の定、明美は店の前でカンカンに怒っていた。
「あんたと時間通りに待ち合わせできた試しないわ。」
ごもっともな言い分だが、待たされる回数で言うと、私のほうが群を抜いて多い。
明美は、私の短大時代からの友人だ。
同じ医療福祉学部だった明美は、岡山から東京に出てきた田舎者のくせに、標準語を話すような奴で、正直いけ好かなかった。
ただ、どこか馬が合って、学生時代はいろんな遊びをした。未成年でおかまバーに入り浸り、実習の時も、二人でこそこそと抜け出して、路地裏でビールを飲みながら星を見たこともあった。
今は、平塚にある老人福祉施設に勤めていて、卒業した今でも定期的に会うようにしている。