うっせえよ!





月刊カミツレで連載が決まると、花の名社との年間契約を勧められる。



これは、その年、他の出版社へは作品を書かないという約束の代わりに、年棒を支払われるという契約だ。



年棒……まあ、作家によってまちまちではあるけれど、例えるなら、新人でサラリーマンの部長クラスの給料(ボーナスなし)くらいの金額だろうか。



つまり、契約打ち切りというのは、野球選手で言うところの戦力外通告のようなものなのだ。お金も支払われないだけでなく、「お前は文学界には必要ない。」と烙印を押されるわけだから、いたたまれないだろう。



もちろん、この契約は強制ではない。私のように契約をしないで、他の出版社でも仕事をしている作家もいる。フリーアナウンサーという例えがわかりやすいかもしれない。



花の名社からは何度も契約を持ちかけられるが、私は断り続けている。まだまだ若いし、花の名社で連載をして、それが書籍化されることを考えても、他の出版社で同じように連載をして、書籍化されるほうが稼ぎがいいのだ。



安定を求めるなら即契約。でも、私のように「エゴイスト」で波に乗っている間はフリー。大学進学か、高卒で就職するかと同じような分岐点かもしれない。




< 63 / 252 >

この作品をシェア

pagetop