うっせえよ!





「嫌ならいいんだ。今まで通りサスペンスを書いてくれたほうが俺としても都合がいい。お前には恋愛小説は向いてないからな。」



「それは誠司さん個人の意見ですよね? 万人が万人、好きだなんて芸術はこの世にはありません。だからこそ、芸術は奥が深いんです。」



「そりゃお前の言うことにも一理ある。ただ、パンジーで連載中の恋愛小説、なんだっけ? イケメン社長の御曹司とOLの身分違いの恋だっけか? そんなもんを芥川賞受賞者を輩出しているパンジーで連載して、認められるとでも思ったのか? パンジーでアンケート1位を獲れると思ってんのか?」



「別に1位を獲るために書いているわけじゃないですよ。書きたいものを書く。ただそれだけです。」



「それは作家のエゴだ。需要がないものを書くなんて、自己満足じゃないか。そういうのは、趣味でやっていればいい。業界なめんな。」



正論だった。でも、私は自己満足で書いているわけじゃない。本当に面白いと思って書いているのだ。本気で書いている。全身全霊使って書いている。満身創痍になることだってある。




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