うっせえよ!
翌朝、目を覚ますと誠司さんはすでに起きていて、真新しいカッターシャツに袖を通しているところだった。
「もう出勤ですか?」
「ああ。ここから通うのは初めてだからな。電車の乗り換えもしっかり調べて、余裕を持って出ようと思って。」
本当に真面目だな、この人。仕事に関してだけは。
「朝ごはん、食べました?」
「俺、朝は食べないんだ。朝は胃腸を休ませる時間って話を聞いてな。それからはもうう5年もそんな生活してるよ。」
私と同じだ。何だか小さな運命を感じてしまう。
「じゃあせめてコーヒーだけでも飲んでいきませんか? 淹れますから。」
「いいよ。お湯が沸くのって結構時間かかるだろ? ティファールなら話は別だけど。」
「うち、ティファールの電気ケトルですよ?」
誠司さんは結んだままのネクタイを首にかけたまま、席に着いた。
「じゃあ、もらうよ。ブラックで砂糖は……。」
「2個。わかってます。」
ケトルにミネラルウォーターを注いだ。ティファールの電気ケトルはあっという間にすぐに沸く。