私のいとおしい残念な男達


しかし


あいつは、本当にこのまま和馬に黙ったまま付き合っていくのか?




「黒木さん、どこ行ってたんですか?!」

暫く一台のエレベーターを待って部署に帰ったため、俺を待ち構えていた阿部がすぐに書類を持ってきた

「悪い、ヤボ用だ」

社内メールで呼び出されて少し抜けるつもりだったが、思いの外時間が経っていた

「いえ、大体検討はついてましたけど、それにしたって遅過ぎですよ。しつこかったんですか?」

「ああ、今回の先方並みにしつこかったかな、断るのは簡単なんだが」

貰い受けた書類を手に、首をコキコキと鳴らすような仕草を見せる

「………一々嫌味な言い方ですね、黒木さん」


企画宣伝広報部所属のクリエイティブ部門

ここのとこ商品価値の折り合いが悪く、クライアントとの話が足踏み状態のまま、兎に角下の人間が走り回っているために、面倒くさい書類関係が山積みになる

現場がわからないまま、まず企画の練り直しから会議ばかりで身動きが取れない

「だから外の仕事は嫌なんだ……」


「そう言わないで下さいよ。まだ先方と喧嘩が出来るだけマシですよ、他の営業部とかでは得意先の不穏な金の動きの裏を取るのに走っているとか………」

「営業部で?」

「ただちょっと聞いただけなんですけどねぇ」


また阿部のお得意の噂話か…………


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