私のいとおしい残念な男達
この寒い中、フワフワしたスカートにひらひらエプロンって、まさに初めての体験だった
「そんな事言って………結構楽しそうだったじゃないですか小夏先輩。写真撮影なんかお願いされたりして」
「…………ははっ、モモちゃぁん帰って残業にならないように頑張ろうね」
「ったく、あんなに欠陥品だった井ノ上さんがいなくなったせいで、返って余分な訂正作業が増えるなんて、全く最後まであの駄目ンズめぇ……」
モモちゃんの不満のほこ先は連日の残業にもあるか………
「確かに、楽になるどころか返って残業が増えちゃったしねぇ」
でも、仕事がしやすくなった事には変わりない
あの飲み会以来出勤して来ずに、いつの間にか辞職していた井ノ上さん
何でも実家である井ノ上物産での経営不信のため引き戻されたとか………
『なんか、実は夜中の社内で顧客データー持ち出しとか内部告白があったらしいですよ。それで出勤停止になったとか』
実際には輸入部での顧客データーなんて、そこそこ大手の井ノ上物産には必要のないものだと思うが
一方で、古い体制からの取引先だった井ノ上物産を、上層階部署である企画営業部が、再開発事業から外し
当の井ノ上物産内で、会社自体の資金不信が公けになったとか………
『珍しくうちの会社にしては決断早かったですよね。その他の賛同企業との反対とかもあっただろうに、関連子会社だけを提携に引き入れられるなんて』
そんな社内での噂話が暫く広がっていた