私のいとおしい残念な男達
** 和馬 **


最後は、振り向かないままの小夏の背中を見つめドアを閉めた

その肩は、泣いていたんだろう

閉めたドアの先で、鼻を啜り暫く動けないでいる小夏を感じる

「…………」

ドアノブを持ったまま動けないのは、俺も同じだ


このまま、またドアを開けて彼女を引き入れて「本当は……」とこの部屋に閉じ込めてキツく抱きしめたら何もかもなかった事になるだろうか

「ははっ、何を今さら………」

そう呟いていると、玄関から足を引きづるように移動していく靴音が、だんだんと聞こえなくなっていった

今引き戻したとしても、一度出た膿は完全に消えないまま、いつか色々な我慢を強いてしまうことになるだろう

だから、彼女を俺から解放してあげなきゃ……




リビングに戻るとすぐに携帯に手を伸ばした



「………波瑠?」


コールすぐに出た波瑠

「どうせ会社にいるんだろ?今小夏がうちから帰ったから………」


『ああ、分かってる』


んっ?なんか音が……
近所の横断歩道の警告音が微かに電話口から

「波瑠、まさかマンションの前か?」

『…………』


ずっと待ってたのか?結構うちに居たぞ小夏


「馬鹿だな、もし小夏がマンションから明日まで出て来なかったらどうしたんだよ……」


『………っ』


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