私のいとおしい残念な男達


「………小夏」


「………たぶん、出発の見送りとか無理だと思うから。ごめんね」


ローヒールに足を通しながらドアノブに手をかける

「うん……じゃあ元気でね」


「…………っ」


私が開けた扉がふわりと軽くなって、背中から和馬のシトラスの香りを感じる

無理な態勢で、開けた扉を押してくれた和馬
外の冷たい空気がすぐにその香りを消した

「寒いね。マフラー貸そうか?」


「………いい、きっと返せないから」


「そうだね……じゃあ送れないけど気をつけてね」

顔を向けないまま一度頭を下げると、バタンと扉が閉まった


「ははっ、こうゆう時って出て行く方がドアを閉めるもんじゃない………?」


玄関を背に、パンパンに膨らんだ心臓を押さえながら呟いた

まだダメだ、うちに着くまで泣いたら電車に乗れない

既にダダ漏れている涙をその場で鼻を啜りながら手で擦る


…………帰らなきゃ



一歩づつ重たい足を引きづりながらエレベーターに向かう







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