私のいとおしい残念な男達
騒然とする居酒屋の中で、聞き覚えのある声で名前を呼ばれ、3人同時に振り向く
「黒木?」
「いつもの女子会か?」
テーブルの前まで来て、3人を見下ろす黒木
「黒木さん、お1人ですか?」
モモちゃんがそう聞いた
とりあえず周りにはお連れがいないみたいだけど
「いや、後輩と一緒………」
「黒木さん、待って下さいよぉ…ってあっ!」
「?」
黒木の後ろから来たちょっとインテリ風の男の子、私たちを見るなり安心したような顔をした
「ここにいたんですねぇ七瀬さん」
えっ? この人私とお知り合いでしたっけ?
「もう、待ち合わせてるんなら電話くらいしたらいいじゃ………ってグッぅ!」
「???」
その連れの男性の脇腹に、極さり気なく肘鉄を入れる黒木
「煩い黙れ阿部。向こうに座るぞ」
くの字に曲がる後輩君の腕を取り身体を翻す黒木に、「え?なんで?」といった感じだ
「ねぇ、せっかくだから一緒にどう?黒木君」
珍しく舞子がそう声をかけた
「……………」
「ワザワザここまで小夏を捜しにきたんでしょ?」
「…………っ」
まあ、コーナーの6人掛けテーブルだから2人座っても大丈夫だけど………
「それともやっぱり偶然?」
意味有り気に黒木を見上げる舞子に視線を逸らす
「偶然だ……」
そりゃぁ偶然でしょ。急に決まった飲み会を、知っているのは遅くなると電話を入れた家族くらいだ
仕方なくと言わんばからにその場に座る黒木と阿部君