私のいとおしい残念な男達
「それ、嫁さんに持っていけよ。貰いもんだから」
「え、でもこれ……アシスタント事務の子が月曜に食べるって喜んでましたよ?」
受け取るのを躊躇する阿部に無理矢理持たせた
「いいんだよ。腹減ったから残業中に食った事にすれば」
そう言って帰り仕度を済ませ一緒にエレベーターへ乗り込んだ
「ありがとうございます」
嫁さんの喜ぶ顔が見えたのか、頰を上げ顔を綻ばせた
一瞬にして機嫌が直ったな、単純な奴め
18階から乗り込んだエレベーターは、一度途中で止まった
「あ、」
そこで乗り込んできた社員が阿部の知り合いらしく、お互いに顔を上げた
「宮崎、残業か?」
「ああ、さすがに月末の週末だからな、お前も大変だな毎晩」
阿部にそう言いながら、俺にも視線を向けて軽く会釈してきた
宮崎?なんかどっかで………
「黒木さんもお疲れ様です」
そう言われて思い出した
「あ、もしかして岬の?」
これまた真面目を絵に描いたような感じの男だ
あの岬舞子に完全に弄られている様なタイプ
口を開けば腹の立つ事しか発しない小夏の友達
あの女と付き合えるこの羊に様な男に、今更ながら感心する
ほらみろ、すごく疲れているみたいだぞこいつ
「最近岬さんと、どう?」
阿部は得意だよな、その手の話
さり気なく振ったその阿部の会話に、相手宮崎の表情は暗くなった
「はは、どうだろう。なんかちょっと避けられてる感じなんだ今………」