私のいとおしい残念な男達
「確かに常務のお嬢さんには会ったけど、別に俺一人とお見合いした訳じゃないのに、
前に営業部の何人かが、新築の常務の家にお邪魔したんだよ………」
説明するように、私に話始めた和馬
営業部の男ばかりの中気を使ってお嬢さんに話し掛けたら、思いの外共通の話題で盛り上がったらしい
「大学生で今時の戦国武将ブームが好きらしくてね。話を弾ませていたところに、常務の甲冑好きが加わって、じゃあ趣味のコレクションを見せてくれるって言うから三人で他の部屋へ行ったんだよ」
それを一緒に来てた奴等が勘違いしたんだ
実際、そんな結婚話なんて微塵もしてないのに
と、溜め息をつきながらそう言った
「………そっかぁ」
………明確で解りやすい
さすが出世頭の営業マンだ。常務の甲冑好きくらい彼はリサーチ済みだっただろうに
その同僚も、本当にただの悪意ない勘違いだったのか?
なんて疑わないんだろうか……………
「噂なんてすぐに収まるよ。私は気にしてないし。話、聞けてよかった」
一瞬和馬の視線が時計に向いたのに気がついて、話を終了させた
「もう、時間だよね。行こうか」
そう言って席を立ち、コーヒーのトレーを持ち上げる
「小夏は最近何かあったでしょう」
「えっ」
一瞬 心臓を吐き出しそうだった
ゆっくりと視線を向けると、私を見上げると言うか、座っていても平行にある和馬の瞳
「……………別に、その噂に少し振り回されただけだよ。なっ、何にも………なんで?」
やっぱり黒木に何か言われたんだろうか
「………………いや、仕事にかまけてたせいかな。いつの間にか小夏が綺麗になってるから」
「!!」
そんな普通言わない事言ってきて顔を傾ける
「なにも出ないよ、そんな事言ったって和馬」
そうだ、きっとただのご機嫌とりに違いない
すぐに身体を翻してカフェを出た