私のいとおしい残念な男達
「はぁっ?」
隣からいきなりそんな風に言われ、顔を上げた
「あ、すいません煩かったです?」
さっきからそこにいて、休憩しながら談笑していた一人が、別の話で思わず普通より声を上げていた
「何?なんの話?」
阿部が二人のさっきから盛り上がっていた話に興味をもって入り込んだ
どうも隣の二人も阿部の知り合いだったらしい
「いや、あの最近駅前にできたBarがヤバイらしいって話」
「あぁーあの入り口がちょっと怪しげな?」
そう言えば、いつの間にかそんな店らしきものがあったっけ、確か
「そう、まあ一見普通のBarなんだけど、でも頼むとバーテンダーが薬を盛ってくれるって話してた奴がいて」
「薬?」
「連れの女の酒の中にな」
「なに、それヤバイだろ………」
阿部が眉をひそめた
「………………」
「なっ、引くだろ?ただの睡眠薬だって言うんだけど本当かどうかって、犯罪だろそれ」
「薬盛ってどうすんだ?」
「それ聞く?」
まぁ、大概想像はつく
「…………うちの社員か?それ」
ちょっとシャレにもならない話で、俺も聞いてみた
話してた二人がうーんと顔を見合わせて、コクンと頭を下げた
「取り引きのある会社の三男坊で、うちの営業部に入社当時はいたらしいんですが、使えない奴で、下の新規部署に回されたらしいです」