哭く花

外は朝日が眩しい。

「少し遅れてるから、途中まで乗せていくよ」

「あ、ありがとうございます」

会わせたい人が来る前に、

私は何をすればいい?

胸騒ぎがする。けれど、先生に声をかけることが出来なかった。

「美岬、今日は午前日課だろ、先に歩いて帰っておいで。」

「…へ?」

そうだ、今日は午前日課。確か、学校の外壁清掃だった。

なんてぼんやり考える。

「先生は?」

「俺は迎えに行ってくるから」

誰を、と問わずとも、その対象は頭の中に浮かんでいた。

「…はい」

心細い。けれどそんな我儘は言えない。

だから、静かに停まった車からそっと降りることしか出来なかった。

「じゃあ、また夕方」

「うん、いってきます。」

ドアを締めると、先生は手を振りながら先に走っていった。

一人で登る坂。

何となく足が重くて、

まとわりつく暑さと蝉の声も今の私には鬱陶しかった。

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