記憶の中の彼


軽く世間話をしたところで切り出した。

「そういえばお母さんさ、陸のおばあちゃんかおじいちゃんの連絡先を知っている?」

「急にどうしたの」

母は訝しげな顔をしている。事件以来私は陸を話題に出すこともなかったし、また母も同じであった。

「わたし陸の事件について調べているの」

「そう。その気になったのね」

その言葉を聞いて思い出す。

事件の日に火事現場へ行ったわたしは気を失い、目が覚めると自室のベッドに横たわっていた。

下のリビングには母がいた。

「お母さん、陸は?」

母は一瞬躊躇うそぶりを見せたが、何かを決心するように一呼吸置き重い口を開いた。

「陸君とはね、もう会えないの」

「どうして?陸と会わせてよ」

わたしは叫んだ。

「陸君は、亡くなったの」

話している母の顔は悲しげに歪んでいた。
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