a・ri・ki・ta・riな雨の物語
 公平はやっぱりやさしい。
 いつも心の中で、いっぱい感謝しているの
に、公平の前だと素直になれなくて、うまく
気持ちが伝えられない。
 つまりは、いつも公平の前だとかわいくな
い女になってしまう。
 高校の頃も反省したことがあったのに、変
われない・・・
 それに公平は、とっくに愛想つかしている
ってそう・・・思う。
 そんなこと考えているうちに、ルミちゃん
の姿が、視線の先に現れた。
 いつもに増して大胆な、胸元の開いた赤い
ドレスを着たルミちゃんは、私達の後ろの通
路を通って、お客様を迎える準備をしている
ところだった。
 ルミちゃんに気づかれないように、座高を
低くして椅子に隠れながら様子を伺っている

 「長井さんだ」
 

 
< 85 / 206 >

この作品をシェア

pagetop