笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


それとも。


私がいつか笑えるようになることだろうか。


本当の答えは両親本人にしか分からない、分からないけど――


「依美、今は俺と一緒にいよう」


もう一度、ぎゅっと抱きしめられる。


さっきよりは力強く、大きく。


そして奏の手は、優しく私の手を包んだ。


暑い夏のはずなのに、暑さより温かさを感じて。


「…うん」

< 173 / 463 >

この作品をシェア

pagetop