笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
でもその瞬間――彩菜の声が俺の鼓膜を刺激した。
「奏!触っちゃダメ!」
驚いた俺は、その木からそっと手を離す。
彩菜の方を見ると、彩菜も俺のことを見ていて、それは何だか切なそうな表情にも見えた。
「…ごめんね、大きな声出して…」
彩菜は申し訳なさそうにそれだけ言うと、また紅茶をいれ始めた。
「いや、俺もごめん」
この木に触っていけない理由が分からなかったけど、その理由を聞いていいかさえも分からなかった。
でも、木もあるし芝生もあるこの空間だ。