笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
きっと彩菜は植物が好きなんだと。
だから、その植物に勝手に触られたのが嫌だったのかもしれない。
優しい彩菜の、性格上の理由だったのだろう。
そう思ったのか、そう思うことにしたのか、席に戻った俺はただ彩菜を見ていた。
「紅茶、よかったらどうぞ」
少しして奥のカウンターから戻ってきた彩菜は、笑顔で俺に紅茶を出してくれた。
彩菜らしいピンク色のカップに張られた、薄茶色の膜。
その表面には俺の顔がぼんやりと映っていて、ゆらゆらと揺れながら上へと湯気を立ち上らせている。