笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
笑顔を浮かべるわけでもなく、何も話すわけでもなく。
ただ無表情で見つめていた私を、どう思っただろう。
やっぱり、気持ち悪いと思われたかもしれない。
気味が悪いと、思われたかもしれない。
嫌な方向に膨らんでいくその不安に、逃がした視線を動かすことができないまま、私はじっと黙っていた。
しかし、そんな心配をよそに。
「ハハハッ、エミおもしろ」
奏は、笑った。
私は奏の言葉のタイミングで、思わずそっと顔を上げる。
奏の笑顔はやっぱり何度見ても優しくて、それは数秒前まで何となく視線を逃がしていた自分が、何だかとても冷たい人間にさえ感じるほどだった。