笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
りぃや両親と話しているときに、こんなに汗を感じたことはない。
でも今、私の手に感じるのは汗以外の何者でもなくて。
知らない自分を、知り始めている気がした。
――知らない、自分を。
きっと何秒かの沈黙が過ぎた。
奏は何も言わず、優しい笑顔のまま私の言葉を待っている。
私は次の言葉を探して、形にする。
「…依美っていう名前、好きじゃないから、できればその呼び方で呼ばないで欲しい」
初対面にも関わらず、私を“エミ”と呼び始めた奏。