サプライズ★フィナーレ
それでも私は今、ホテル最上階スイートルーム前にいる。

こんな緊張感久しぶり……
オーディションの時さえも、ここまで緊張しなかったと思うほど、心臓がバクバク飛び出している感覚。

もう何度ベルに、震えそうな指を伸ばしたか。

胸に両手を重ねて、目を閉じ深呼吸……
頭を真っ白にして覚悟を決め、ベルを鳴らした。

その瞬間、心臓音が最高値に急上昇。

逃げ出したくなるのを、必死に堪えた。

数秒後、怪訝そうな低い声が、中から聞こえてきた。


「……愛梨です」


「……」


返事はなく、一呼吸おいてから静かにドアが開かれた。

彼は、私を見ると目を見開き、マジマジと無言のまま見下ろしてきた。

固まってるといった方が、ピッタリかもしれない。

でも我に返ると、フリーズしていた機器が作動を始めたように、ドアをしっかりと開けてくれた。


「……お邪魔します」


「……どうぞ」


私は、旅行鞄を片手に小さく頷き、緊張感漂う空間へと足を踏み入れて行く。
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