悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?


音も無く飲み干すと、キースが微笑む。
けれど、そんな甘い刺激さえ今の私の心臓をじわじわ締め付ける痛みに近い。

私に、冗談とはいえ、ちゃんと『女性』として口説いてくれたキース。
甘い雰囲気や、心に甘い痛みを伴うような言葉。
それらを私は巧から一度も貰ったことが無い。
だから、巧の中の私の今の立場が分からずに、こんなふうに迷っていたんだ。

それは私の恋愛経験不足のせいだけど、一度でもそんな風に巧から見てもらえたら、私の答えも出るのかもしれない。

「送るよ、シノ。それとももうプライベートでは会ってくれない?」

一緒に店を出ながら、キースが不安げに私の顔を覗きこむ。
こんな風に、自分の感情を相手に惜しみなく伝えて甘えるのがキースの恋愛テクニックなのかな?
巧とは正反対そう。
「……疑った目で見てるね」
「だってキースは恋愛経験豊富だもの」
「それでも本命には全く振り向いてもらえてないみたいですよ」

小さく溜息を吐くと、そのまま長い手を上げてタクシーを止めた。

「今日はもう引いておきますが、私なら貴方の欲しい言葉、欲しいもの全て用意できますからね」


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