悪役秘書は、シンデレラの夢を見る!?
立花さんに用意してもらっていた書類が、朝、森元さんが巧に頼まれて用意していた別の規格の書類に入れ換わっていた。
巧はまだキースと副社長に掴まっている。
言うならば、私しか時間もない。
「森元さなえ。……いる?」
庶務課に顔を出すと、山積みのファイルが雪崩を起こしている悲惨なデスクに、森元は居なかった。
「多分、午後の会議用にお茶を用意してくれてると思いますよ」
「ありがとう」
庶務課の若そうな女性社員だった。
まだ彼女が失敗をしたことも知らず、のんびりと教えてくれた。
(お茶の用意といえば、給湯室か……)
あまり縁がない場所だったが、急いで向かう。
「どんどん仕事も覚えていってるから、頑張りなさいね」
給湯室から聞こえたのは、庶務課の一番の古株の社員。
確か竹口と言ったかもしれない。いつもにこにこと笑顔だけれど、仕事は捌けて信頼ができる社員だった。
その竹口さんが、褒めている相手に私は固まった。
「そんな、私なんてっ 英田秘書や巧さんに比べたらまだまだで」
「あははは、そんなの当たり前じゃない。エリートと比べたら自分が可哀相よ。あの二人は生まれた時からこの会社を背負っていたエリートでしょ。基盤が違う違う」
「隙がないよねえ、あの二人は」
「英田秘書なんて、自分に自信もってるよね。指先の小さな動きですら、なんか完璧だもん」
竹口さんだけでなく数人の女性社員もお茶の用意をしているのか、話が盛り上がっている。