イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「なんだ、あなたたち。当たりがついていたのなら先に言ってください。無駄にパーク中を歩き回ってしまったじゃありませんか」

氷川が額を抑えて頭痛を押し殺すように突っ伏した。
ケラケラと笑いながら市ヶ谷くんが氷川の肩を叩く。

「せっかく来たんですから、もっと楽しみましょうよ! 急がば回れっていうじゃないですか!」

「君は随分と楽しそうですね……大好きな『朱石先輩』とデートできて満足ですか?」

「はい! もちろん! ……できれば、二人きりで来たかったですけど」

「……君は素直な子だ」

二人の会話を聞きながら、なんとも言えない居心地の悪さに襲われて、私は黙り込んだ。

ジョークだとしてもそんな風に言われるのは気恥ずかしい。
まったく、市ヶ谷くんは調子が良すぎて時々困ってしまう。先輩をそんな風にからかうなんて……
無駄にジュースを啜りながら、強引に話題を戻してごまかした。

「じゃあ、休憩が済んだら、そのお城とジェットコースターを見学しに行くってことで。みんなOK?」

「OKです!」
「わかりました」
「はい」

全員の了承を得て、そして話題が逸れたことに安堵して、私は残りのジュースを一気に飲み干した。
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