イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「あ、あの」

「ん?」

「手……繋がなくていいって、さっき、自分で言って――」

私が解こうとした手を氷川は無理やり握り直す。
それどころか、離すもんかとでもいうように、きゅっと力を強めた。

「仕事のときはね。でも、今は仕事じゃなくデートだから」

「デ、デート?」

「うん。二人きりになった瞬間から、これはデート」

パチリとしなやかな仕草でウインク。
反対にしなやかじゃない私の心臓はバクンバクンと乱れだす。

「ね、ちょっと寄り道していかない?」

そう行って流星が指した先は、細い路地になっていて、両側には小さな屋台がずらりと軒を連ねていた。
赤やオレンジの華やかな提灯がぶら下がっている。わたあめ、たこやき、ヨーヨー釣り、型抜き、まるで小さなお祭りだ。
踏み込んだ瞬間、賑やかな笛の音色や太鼓のリズムに包まれる。
外からは聞こえなかったところを見ると、どうやらこの一区画だけに音を封じ込める工夫がなされているようだ。

「あ、懐かしいなぁ」

そう言って流星が足を止めたのは、射的の屋台だった。

「俺、結構得意かも。見てて」

そう強気に宣言した流星は、店番をしているはっぴを着たお祭りピエロに、ポケットから取り出した百円を渡した。
ピエロから弾となるコルクを受け取り、射的銃の先端に詰め、構える。
ピンクと白の紅白幕で覆われた台座の上で等間隔に並べられている玩具の中から、どうやら小さなクマのぬいぐるみを狙っているようだった。
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