徒然なるままに
始まった夏

「この大富豪で負けたら全員にアイスな。」
「いや、それじゃたるいから相川美月と1ヶ月付き合うことにしようぜ。」
確か、そんな始まりだったと思う。
美月は援助交際だのキャバクラだの、要するに夜の世界にいると噂の絶えない奴で、見た目は綺麗めだけど学校じゃ一言も話さなくて、悪い意味で一目置かれていた。
喋らないから友だちがいないのか、友だちがいないから喋らないのかは知らなかったけど、そういう訳で勝手に罰ゲームの標的にされ、そして見事に俺が負けた。
賭けるのがジュースだろうがアイスだろうが、十中八九俺が負けるのに。
付き合うとか付き合わないとか以前に、できれば関わりたくないというのが本音だった。
だって、周りになんて言われるかなんて皆目見当がついたから。
「早く行けよ、航太!」
ささやき声に肩を押され、俺はそのまま美月に近づいた。
「付き合って」
「うん、いいよ」
美月が誰に告白されても断らないのは周知の事実で、とてもこれから付き合うとは思えない無表情と淡々とした言葉で、俺らの関係はできあがった。
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