徒然なるままに
垣間見た小さな闇

「罰ゲーム?」
みんなが恋人関係の成立を見守り、満足げに去って行くと、美月はそう言っていたずらに俺を探る。
当たりでしょ?慣れてるからと、美月は空を仰ぎながら少し笑った。
その笑顔が本当に一瞬だけ切なく歪んだ気がしたけれど、俺は気にしないことにしていた。
そして、こんな疑似恋愛にはルールなんてものができた。
それは俺ら二人の意思なんてまるでお構いなしの、周りの人間たちを満足させるためだけのルールだった。
「航太は本当のところ、私をどう思ってるの?」
突然の質問に無意識に心臓が跳ねた。
答えたくなかったらいいよ、いや答えれないのかと、また笑いながら美月は空を仰いだ。
そして求めた訳でもないが、ポツリポツリと独り言のように語り始めた。
「言っとくけど私、夜の世界に足を染めたことはないから。こうやってからかわれて好きでもない人と付き合ったことは山ほどあるけど、噂はたいてい根も葉もないし、そもそもそういうことでお金もらったことはない。でもただひとつ私がどうしようもない人間だってことは否定できないかな。お父さんはアル中だし、お母さんは私を捨ててどこかへ行っちゃったきりだし。」
誰にも愛されてないっていうのは、昔から今も同じ。
そう言いながら美月は自分を嘲笑していた。
俺は初めてまともに聞く美月の少し高めの可愛らしい声に引き込まれながらも、それは甘酸っぱい恋の始まりなんかじゃなく、ボランティア以上本気未満の気持ちを生んでいた。
つまり、こいつかわいそうだなぁ、でも一緒にいて損や害はないか。
その程度だ。
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