徒然なるままに
情けは人の為ならず

毎日登下校を一緒にして、毎日名前を呼び合って、暇な時にはたわいもなく電話して。
そんなことしてるうちになんだろうか、不思議と情って湧いてくるものだな。
こいつがいなきゃ!というのとは違うけど、いなかったら違和感があるみたいな、そんな感じ。
そんな毎日にどうせだから青春しようと、学校とはまるで別人のように無邪気な笑顔で美月が決めたデート。
自転車を、二人乗りして河川敷を走って、公園の木の下で喋る。
センスが割と古風で少し笑ってしまった。
美月の言葉や提案で笑う日が来るなんて思わなかったな。
ただ、まだ俺は知らなかった。
これから先、思ってもなかった出来事がさらに待っているなんてことは。
「航太はさ、世界の終わりについて考えたこと、ある?」
「中二病かよ。」
「茶化さないでよ。じゃあ、自分の人生の終わりは?今終わっても絶対後悔しないって、言える?」
俺は思わず言葉をつまらせた。
「自然界で死にたいなんて口にするのは人間だけなのに、死に直面した時に抗おうとするのも人間だけだなんて、なんともおかしな話。そう思わない?」
「お、おぅ……。」
俺は情けなく相槌を打つしかなかった。
美月がこんなことを考えてる子だとは思わなかったし、言われた通りだと思ったからだ。
「私さ、何度も死んじゃおうかなって思ったことあるんだよ。友だちはなぜかできないし、いつもどこかで噂が立ってて、いつもどこかに視線を感じて。親にもなんとも思われてなくて。でもさ、こうやって航太と手繋いでると、生きてるんだなって思うんだよね。もうキンキンに冷えてしまったのかって思ってた自分の身体にも血が通ってて、無感覚になったのかと思ってた心もちゃんとあるんだなってさ。」
気づいたら俺は、生きててくれてよかった。
美月に心からそう思っていた。
でもそれが同情なのかなんなのかわからないまま。
ただ過ぎていく時間に急かされて俺らは帰り道を急いだ。
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