徒然なるままに
好きなところ

「おっはよ!」
明くる朝、駅の西口で見た美月は綺麗で可愛くて、まして昨日あれほど俺を悩ませた人物とは思えなかったけど……。
「ちょっと、なに?どうしたの?」
通学電車に揺られながら改めて美月をきちんと見つめてみると、瞳の奥に悟りにも似た悲しみがあって、美月は半端な生き方をしたい訳じゃないとわかった。
その日、電車を降りるとかすかに恋の香りがした気がした。
それは、確実に恋の味に変わっていった。
俺は君の屈託のない笑顔に惚れ、そして君の憂いを知ってなお惹かれたんだ。
「航太、なんか考え事してるんでしょ。」
自分の気持ちと向き合って、人をたくさんたくさん見てきたからだろうか、全てを見透かすような美月に隠し事は一切できなかった。
それがちょっと痛いような、どこか嬉しいような気がしていた。
「なんかさ、よく考えると、俺って友だちいないのかなってな。」
「航太、今一緒にいて一番幸せだって思える人と一緒にいればいいんだよ。後先考えず…とまではなかなか言えないけどね、どんなに現実から逃げても自分の心からは逃げられないから。人生後悔しないためにはさ、それが一番いいの。航太は今回の罰ゲームにどれくらいの期間指定されたか知らないけど、私は航太のこと好きだよ。目を見ればどれだけ素直に生きてきたかわかるもの。」
俺は自分でもわかるくらい露骨に硬直していた。
その言葉をどう受け止めればいいのか、正直迷っていたからだ。
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