『ココロ彩る恋』を貴方と……
ブラックな絵の正体は
翌朝は肌寒かった。北西の風が吹くとテレビの天気予報で言っていた通りだなと思いながら出勤する。


昨夜はあれからすぐに服を着たのに、何故か今朝は熱っぽい。

ここ数年風邪も引かないくらい元気だった私が、なんだか風邪を引いているみたいだ。


「自分の作った料理に当たった?まさかね」


そしたらあそこでぼぅっとしている人は既に大病を患っててもおかしくないはず。


「あの人がいつも通りなんだから料理は関係ないと見た」


目線の先には籐椅子に座り、ぼんやりと外を眺める兵藤さんの姿があった。

ついさっき起きてきて、ああしてぼぅっと座っている。


「何を思っているんだろう。家族のことかな」


思い出したくない家族と常に思い出したい家族が私にはある。

地獄と天国を味わった生活の中で生きてきた私。そのギャップに最初は驚き、拒否をし、否定を繰り返してきた。



『お母さんに怒られる』

『お母さんに叩かれる』

『また一人きりにされる……』


我が儘を言えなかった小さな頃のクセが抜けなくて、祖父と暮らし始めてからもニコリとも笑えなかった。

ずっと感情を押し殺して生きてきた。

そんな私を養護施設まで迎えに来てくれた日のことは、決して忘れたことがない。


壁に目を向けて涙も流せずにいた私に祖父は優しい声をかけてくれた。


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