『ココロ彩る恋』を貴方と……
印象深い版画ではある。
色のコントラストが絶妙に上手くて、きっとファンも多いだろうな…と思わせるような画。

だけど、私はその絵が少し嫌いだと思った。
この世の悲しみを全て、彼女が背負い込んでいるような気がしてくる。

記事によればこの展覧会は『鎮魂歌シリーズ』と称して行われたらしく、他にも載っていた写真の全てで、この女性像が涙を流していた。


「これってもしかして、同じ人がモデル?」


ストレートの髪型の女性。
左側の頬にエクボがあって、唇が小さくて鼻先が少し上向きで、まつ毛が長くて毛先が寝てて二重瞼なところまで同じ。


「首も細いし肩も小さくて丸いし……誰なんだろう?恋人かな……」


勤め始めてまだ3日程度だから、彼に恋人がいるのかどうかも知らない。
ドラキュラみたいな夜型生活を送っているような人に恋人がいるんだとして、一体いつ会ったりしてるんだろうか。


「昼間?それとも夜?」


どちらだろう…と思いながら、もしそうだとしたら今日のあの行為はマズイよね…と考えた。
寝ぼけて家政婦にチューとかヤバい。彼女に知れたらそれこそ首にされてしまう。


「次からは気をつけないと」


うん…と頷いて記事を読むのをやめた。
キッチンの流しに立ち、今夜もカップ麺を作る。


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