『ココロ彩る恋』を貴方と……
その時、祖父は笑いながら話してくれた。

『自分が好きな人の側を離れたくないからだよ』……と。


「お爺ちゃん達は昔には珍しく恋愛結婚だったそうです。周りからも認められる程仲がいい夫婦だったらしくて、お店に来る常連のお客さん達もよくその話をしていました」


仲が悪くて別れた自分の両親しか知らなかったから、そんな夢みたいな関係があるのが不思議で仕様がなかった。


「お爺ちゃんが亡くなり家を引き払うことになった時、この指輪を見つけたの。

遺骨の置かれてあった仏壇の引き出しの奥にしまわれていて、とても大切にしていたんだな…と思った」


ぎゅっと握ると彼が手の平を開いて摘み上げた。
台座の上に輝く白い石を見つめる目の中に、様々な色が映っている。


「指輪の中には愛が込められていると感じた。お爺ちゃんのお婆ちゃんへの想いが、山盛り詰まっているんだな…と思えたの」


何も残らなかった訳じゃない。
この指輪と同じ価値あるものを私は沢山頂いた。


「いつか好きな人ができたら、この指輪を嵌めて貰おうと決めてるの。二人の関係のように、死んでも離れないでいたいと願ったから」


独りきりで残されるのはもう嫌だ。
例えば何かの不幸で引き裂かれたとしても、ココロだけは側に居続けたい。
好きな人の側でずっと、暮らし続けていたい……。



(兵藤さんにそれを願ってはいけない?)


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