『ココロ彩る恋』を貴方と……
窺いながら目を見た。
石を見続けている人の顔が締まり、きゅっと唇を固く窄める。


(そんなに簡単にはいかないよね……)


正直なところ思いを伝え合ったばかり。
これから先も思い続いていけるかどうかは謎だ。


(それなのにこれを嵌めて欲しいとは言えない……)


返して貰おうと思い、右手の平を向けた。

指輪に落とされていた眼差しが戻り、ドキン…と胸が打たれる。



「指輪を下さい」


兵藤さんのくれた空のケースに片付けようと思った。

手を前に差し出すと、彼の手が指先に触れた。


「こっちじゃなくて反対」


声に出された言葉に驚き、目が丸くなる。


「これは左手にするんだろう?」


指輪を見せて微笑む。



「でも…」


私達はまだ始まったばかりだし。


狼狽える私の右手を下ろしてしまい、兵藤さんは左手を持ち上げた。


「言った筈だよ。最初から家政婦は要らないんだって」


そう言うと指先で摘んでいた物を通しだす。

薬指の爪先から通り始めた輪は、冷たい感触を微かに残しながら滑っていった。



「ピッタリだ」


嬉しそうに笑う顔を見たままで、呆然と彼を見つめる。


「この指輪に誓えばいい?永遠に君の側に居るって」


口角の上がった唇を見ていた。

何も言葉が発せられず、ただぼぅっとするばかりだった。



「紫音…?」


< 257 / 260 >

この作品をシェア

pagetop