『ココロ彩る恋』を貴方と……
「…もうっ！こんなの足元に置いてちゃ危ないでしょう…！」


そう言いながら拾い上げ、視界に入ってきた新聞記事を見て驚いた。



「この写真の人……」


きちんとYシャツを着ている男の人が写っている。
脇に立つ人に向かって、なんだか指示を出しているようにも見える写真。


その男の人はどこかで見た事があるような気がする。

四角張った顔の輪郭と言い、二重だけど切れ長の目尻と言い、この最近どこかで見たような……


「…体型も似てる気がしない？そこで熊のように眠ってる人に……」


唖然としたまま近寄って顔を見た。
写真に目を落とし、もう一度顔を確かめる。


「……やっぱり、兵藤さんだ」


だって、眉の形が同じだもん。しかも、耳の中にある黒子の位置までが同じ。


二、三度目を行き来させて記事を読みだした。
兵藤さんの個展に関する特集記事だったようで、その作品の素晴らしさと彼の人格がわかるような事も書かれてある。



『穏やかな人柄が垣間見えるような作品の数々』


そう書かれてある作品はどれも綺麗で見事だった。

これまでとは違う作風で描かれてあることを高く評価されている。

私は何も知らずにこの家の家政婦として来たけれど、どうやら兵藤さんは、とんでもなく有名な版画作家だったらしい。


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