『ココロ彩る恋』を貴方と……
ライバルは広報部長
それから3日後、ライバルは突然現れた。


「初めまして。私、兵藤 昂の個展の広報担当をしております。河井爽香(かわい さやか)と申します」


名乗ると同時に差し出された名刺を見てハッとした。

(アーティストプランナー広報部部長『河井爽香(かわい さやか)』……この人が「さやか」さん?)


顔を上げてみると、玄関に佇む女性はニコッと優しい笑みを浮かべる。


(素敵な人……大人の女って感じがする……)


ボブスタイルの髪を肩よりも少し長く伸ばしている。

切れ長の目にはブラウンカラーのシャドウが引かれ、リップは嫌味のないベージュピンクが輝いてる。

鼻は高くて真っ直ぐで、頬骨の位置も高いから顔立ちがはっきりして見える。


(なんと言うか……女神っぽい美人だ)


自分とは正反対だと思いながら、プロの家政婦としての意地を見せた。


「初めまして。家政婦協会から派遣されております満仲紫音と申します。どうぞお上がり下さい」


お客様をいつまでも玄関口に立たせていてはいけない。
スリッパを勧め、こちらです…と先導をしながら、掃除したばかりの応接室へと案内した。


「ふぅん。この間来た時よりも綺麗だわ」


満足そうに眺めて、河井さんという女性は椅子を引いた。


「兵藤さんを呼んで参ります」


< 77 / 260 >

この作品をシェア

pagetop