『ココロ彩る恋』を貴方と……
私じゃ到底勝ち目もないようなハイレベルな女性。
ビィーナスみたいな顔立ちで、肌もキメが細くて綺麗だった。


「容姿もさることながら仕事だってできそうだったよ？」


なんたって部長さん。女性で部長っていうのが凄い。


「私なんて高卒で免許も少なくて、出来ることと言えば家事一般だけなのに」


それも料理に関しては完璧でもない。


「負けるわ〜〜」


なんと言うか、最初から勝負にもならないけど。



落ち込みながらリクエスト通りの濃いコーヒーを淹れて持って行った。

緊張しながらドアをノックして開けると、広報部長の河井さんは兵藤さんの隣に腰掛けている。

ドクン…と鈍い胸の痛みを感じながら、二人の側に濃くて黒い色をしたコーヒーを差し出した。


「ありがとう」


お礼を言ったのは兵藤さんではなく河井さん。

彼女はカップに付けていたシュガーもミルクも入れないで飲み始めた。


「美味しい！」


見開いた目がカップの中を覗き込み、それから私の方へ向く。


「美味しいわ。コーヒー淹れるのがお上手なのね」


褒め方が子供に対して言っているようにも聞こえる。


「ありがとうございます」


一応大人らしく答えた。


「晃さんも飲んでみてよ。美味しいわよ」


隣にいる人の肩を叩いて呼びかける。書類に目を落としていた人が我に返り、コーヒーに気づいて顔を上げた。


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