すきなのに!!
「…あんまり遅くなっちゃだめだよ?晴登くんも駿也くんも心配してたから」


「………」


「あたしも何かあったんじゃないかって心配で心配で…」


「…嘘つき」




あたしがポツリと言った言葉に皆が目を見開いた。


嘘だ。

麗ちゃんの笑顔も泣き顔も、全部、全部あたしにはできないんだもん。


あたしがやると全部嘘になるんだよ。



ずるいよ、麗ちゃんは。





「心配なんかしなくていいから!思ってもないこと言わないでよ!!」


「栞!」



晴くんが怒る声が玄関に響く。

腕を掴まれて晴くんの怒った顔が目の前に現れる。



違う。


違うの。




あたしが悪いの。



あたしは晴くんの腕を払って麗ちゃんを睨みつけた。



「そんな顔したってだめだよ。お兄ちゃんたちは騙せてもあたしは騙せないよ」


「騙そうだなんて思ってな…」


「うるさい!!麗ちゃんだって、お兄ちゃんだって、」




あぁ、まただ。目眩がする。



『もう一緒にいられない』




そう言って家から出て行ったお母さんの姿が目に焼き付いてる。



あの日からあたしはちゃんと笑えなくなった。






「……なんでもない。ごめんね」





あたしは眉を下げてふわりと笑った。


最近、理陽たちと会ってから笑うたびに胸がズキリと痛む。


嘘つきなのはあたしの方だ。




最後に理陽の肩に手を置いて笑った。



ズキリ



痛いよ。


どうして…。







「今日はごめんね。送ってくれてありがと。おやすみ」





言うだけ言って階段を上がって行ったあたしを見て玄関にいた全員が泣きそうな顔をしていたのを、あたしは知らない。





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