すきなのに!!
何か買うのかな。あたしだったらチーズケーキだけどなー。


…あ!万里お坊っちゃまが動き出したぞ。

誰の誕生日かちょっと気になるけど、



『女なんて信用できねぇし、お前のこと仲間だと思ったことは一度もない』




冷たくて鋭い輝の薄茶色の瞳とあたしを真っ向から拒絶したあの声を思い出してあたしは顔をしかめた。



そうだよ。


仲間なんかじゃない。



…違うんだ。



あたしは万里くんが歩き出した方向と反対方向を進んで行った。


同じ学校にいても、もうあの不良たちと話すことはないんだろうな。

理陽も今までだって5年間会ってなかった訳だし、同じ学校になったってクラスが違うんだから会わないんだろう。



はぁ。



今日何度目かわからないため息をついて、あたしは家への近道のために狭い路地裏へ入っていった。


速く家に着くからいいんだけど、いつどんなときでも人通りが少なくてちょっとだけ怖いんだよね。


くねくねと迷路のような路地裏を進んで行くと、数人の男たちの声が聞こえた。


そういえば今日の街はやたらカラフルな頭の不良が多かったような気がしないでもない。


あたしは足を止めて、耳を澄ます。



「おい、まだか」


「すんません!なかなか見つかりません。なんてったってウチのNo.2をぶっ飛ばした女っすよ」


「でもさっきファンシーな店の前で矢野を見ました!」


「矢野?アイツ、引きこもり卒業したのか?」


「わかりません。でもあの女顔は紛れもなく、」




男が次に放った言葉は、あたしにとって衝撃的すぎた。





「西華の、矢野 万里です」





は?







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