すきなのに!!
そして普段は絶対行かない本屋さんの小説コーナーにいる訳です。いつもは漫画ばっかだから気分転換、みたいな。


ぱらぱらと最近人気があるらしい本を捲るけど、なんだか難しい漢字と言葉で埋め尽くされていて全く読めない。


あたしは漢字の問題集を買うことが先決だと気づいた。



問題集が売ってるところはどこかなぁ。

これも普段行かないからわかんないよ。



本屋さんをうろちょろしていると、窓の外で向かいのケーキ屋さんの中をじーっと見ている明るい茶髪の少年が見えた。


明るい茶髪…?

窓に反射して見えた彼の顔を見てあたしは驚愕して近くにあった分厚い本を叩いてしまった。




「ママ、あのお姉ちゃん本叩いたよ。よっぽどペリーポッターに恨みがあるんだろうね」


「こら!違うかもしれないでしょ。きっと探し求めていたペリーポッターをやっと見つけて感動してるのよ。さ、カナちゃんもいっぱい勉強してあのお姉ちゃんみたいにペリー読めるようになろうね」

「はーい」



なんかカナちゃんとそのママに誤解されているようだけど、あたしはこんな分厚い本は読めない。



しかもあたしがうっかり叩いちゃったのが世界中で大人気のあの魔法少年の本だったとは…。



だってだって、あのケーキ屋さんの前にいる子…万里くんだったんだよ。



万里くんてあんな豪邸に住んでるんだからお坊っちゃま、みたいな感じじゃないの?わざわざこんな街中になんでお坊っちゃまがいるんだろう。


なんか心配だよね。

知らない人に誘拐とかされそうじゃない?世間知らずのお坊っちゃまって。


いや、でもお坊っちゃまは護身術くらいやってんのかな。




あたしはやっと見つけた漢字の問題集をレジでお会計してカバンの中に雑に突っ込んだ。意外と重い。



「ありがとうございましたー」




やる気のない店員に見送られて本屋さんを出たあたしはケーキ屋さんの前にいる万里くんを見つめていた。


もしかして、今日不良の誰かの誕生日とか?理陽は確か9月だった気がするから、それ以外かな。


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