ラティアの月光宝花
「民を…このエシャードの民を、俺は守りたい」

呟いたライゼンがセシーリアへと眼を向けた。

「確かに我がエシャード国はラティア帝国に迎えられてこの二十年、とても安定し豊かになりました。だが、イシード帝国に襲撃された今、ラティアの一部となったこのエシャードの民はどうなる?!兵士となって召し上がられたエシャードの民の命を、戦いで散らせるなどごめんだ!」

その声が大理石の壁に響き、より悲壮感を強める。

セシーリアはそんなライゼンを静かに見つめた。

神秘的な姿に、民を思う温かい心。

きっと父であるギルーザ・エシャードの育て方が良かったのだろう。

「分かったわ、ライゼン。あなたの民を思う気持ちは凄く素敵。でも、私も後には引けないの。私にとってこのラティア帝国はお父様……亡き皇帝ロー・ラティアの形見。失うわけにはいかないわ」

それを聞いたライゼンの顔が苦痛に歪む。

それから絞り出すように声を出し、セシーリアを見つめた。

「なら……私に……俺に証明してくれ、セシーリア女王陛下。あなたを信じて共に戦う未来に、エシャードの民の幸せがあるのかを」

その時だった。

「プレーマーソーディ・ラティア!(我はラティアと共に!)」

大きな潔い声が、風のようにエシャード城内へ流れ込んで響いた。

「プレーマーソーディ・ラティア!ライゼン様ー!」

「セシーリア女王陛下、万歳!ライゼン様、万歳!」

城の露台の外から、大勢の叫び声が聞こえる。

「プレーマーソーディ・ラティア!ライゼン様ー!」

呆然としていたライゼンが、身を翻して露台へと飛び出す。

「ライゼン様ー!今こそ我らエシャードの民がラティアに恩返しをする時ですぞ!」
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