ラティアの月光宝花
いずれセシーリアは、国同士の潤滑油としての役割を果たすため、他国の第二以降の王子を婿に取るだろう。

自由な恋が出来るのは今しかない。

だからと言ってほんのひとときでも通じ合えた恋の甘さを身体に刻み付ける事が、果たしてセシーリアにとって真の幸せかどうか、アメリアには分からなかった。

せめぎ合う心に答えを見出だせず、押し黙るアメリアを見て、セシーリアはポツンと呟いた。

「ごめんなさい、アメリア。あなたを困らせてしまったわね。……分かっているの、自分の立場は」

アメリアは息を飲んでセシーリアを見つめた。

「セシーリア様……」

「初恋は実らないと言うわよね」

セシーリアが真っ赤な眼でフワリと笑った。

「お風呂に入ってくる。アメリア、もう大丈夫だから心配しないで。じゃあね」 

アメリアは、部屋から出ていこうとするセシーリアの後ろ姿を見つめた。

あまりにも早い速度で大人へとならなければならない王女に胸が痛んだのだ。
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