ラティアの月光宝花
「アメリア。私の恋は始まりを迎えることなく終わってしまったの」

アメリアは、悲しみに打ちひしがれているセシーリアを愛しく思いながら、優しく声をかけた。

「セシーリア様。人の想いというものは黙っていては伝わりません。ましてや、男と女の想いは」

セシーリアは、ユラユラと悲しみに揺れる瞳を少しだけ上げて、アメリアを見上げた。

「けれど、彼は私を嫌いみたい」

「その方は、ハッキリとそう仰られたのですか?」

セシーリアが力なく首を振った。

「でも、冷たいもの……」

「こんなにお美しいセシーリア様に簡単に愛を告げられる人間などこの国にはおりません。あなたを目の前にすると、同性ですら頬が染まってしまいます。元気を出してくださいませ。まだダメと決まったわけではありません」

アメリアは、それ以上の慰めの言葉が言えなかった。

一国の王女という立場上、セシーリアのこの恋が実を結ぶ見込みなどないからだ。
< 20 / 196 >

この作品をシェア

pagetop