高橋くん攻略法



「昨日も言ったでしょ?高橋くんなら大丈夫だって」
「……でも」
「でも、高橋くんはちゃんと私に声をかけられたじゃん」
「………」
「大丈夫、高橋くんは十分見所があるよ。私が保証してあげる」
「梶さん……」


 きっと周りの人からすれば大したことなんてないことでも、高橋くんには沢山の勇気が必要なんだろう。人と関わることは決して簡単ではない。
 だからこそ高橋くんに知って欲しい。人と関わることは辛いことも苦しいこともあるけれど、それだけではない、それ以上の喜びや楽しみがあるんだってこと。


「決めた。今日から私、高橋くん専用の恋愛マスターになってあげる」
「僕、専用?恋愛マスター?」
「だって弥生のこと好きなんでしょ?」
「あ、あの実はそれについても……」
「大丈夫だって!言いふらしたりしないからさ、任せて!」
「だからそうじゃなくて……」
「よーし!何か燃えてきた!こうなったら本領発揮してやる!何がなんでも高橋くんの恋を成就させてあげるからね!」
「あ、梶さん話を………」
「明日から作戦会議するから必ず放課後残るように!じゃあ私そろそろ帰るから!」
「いやいや、だから話を……」
「じゃね!高橋くんも気をつけて!」


 くるりと高橋くんから背を向けて廊下を駆け出す。そんな私の背中には高橋くんの「ま、待ってください梶さぁぁああん!」という叫び声は全く届いていなかった。

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