タタリアン
数日後。
ケヤキが無くなったあの場所は
曲がりくねった道路が真直ぐに整
備されていた。
不思議なことにその場所では、
自動車がどんなにスピードを出そ
うとしても減速するため交通事故
の起きない道路になった。
翔太は問題が解決し町長を辞職
すると言ったが、町民の嘆願で続
けることになった。そして、あの
時残った謎のレッカー車で町を回
り、町民の苦情を聴くのを仕事に
した。
佐吉が園芸場の近くの道を浅い
木箱を持って、ひょっこら、
ひょっこらと歩いていた。その後
ろから翔太がレッカー車で近づい
た。
佐吉の横に止まると翔太は窓か
ら顔をのぞかせ、
「よっ、じいさん、乗っけて行こ
うか?」
「いや、いいよ。町長さんは仕事
が忙しいじゃろ」
「そうでもないよ。俺は役に立た
ないから。みんな仕事を俺にやら
せないようにさっさと片付けちゃ
うんだ」
「あんた、町長を辞めるって言う
たそうじゃの」
「だって、向いてないもん」
「ほら、これ見てみい」
佐吉は持っていた木箱に挿し木
をしているのを見せた。
「へぇ、小さい葉が出てるじゃ
ん」
「あのケヤキの子じゃよ。あの樹
も元はこうじゃたんじゃよ。ずっ
と辛抱してあそこまで大きくなっ
たんじゃ」
佐吉はケヤキを切るずっと前か
ら挿し木をしていたが、なかなか
育たなかった。それが、あのケヤ
キを切った後、枯れていると思っ
た枝を試しに挿し木にしたら育ち
はじめた。
「分かった。じいさんが言ってた
樹を死なせんために切るって、こ
のこと」
「そうじゃ、あの樹がずっとあそ
こにあったら厄介もの扱いされる
だけじゃ。けど、こうして子を別
の所に植えてやりゃ、いつまでも
生き続けることができる」
「あの樹も人の気づかないところ
で役に立ってたもんな。大昔に宇
宙から来て死んだ旅人を守ってた
んだろうね」
「そうじゃ、でもそれを自慢せん
ところが樹のいいところじゃ。あ
んたもな」
「からかわないで下さいよ。じゃ
行きます」
「あぁ、気いつけて」
翔太はレッカー車を走らせ町民
の苦情を聴いて回った。
そのレッカー車だが、燃料を一
切必要としない未知の装置で動い
ていた。
おわり
ケヤキが無くなったあの場所は
曲がりくねった道路が真直ぐに整
備されていた。
不思議なことにその場所では、
自動車がどんなにスピードを出そ
うとしても減速するため交通事故
の起きない道路になった。
翔太は問題が解決し町長を辞職
すると言ったが、町民の嘆願で続
けることになった。そして、あの
時残った謎のレッカー車で町を回
り、町民の苦情を聴くのを仕事に
した。
佐吉が園芸場の近くの道を浅い
木箱を持って、ひょっこら、
ひょっこらと歩いていた。その後
ろから翔太がレッカー車で近づい
た。
佐吉の横に止まると翔太は窓か
ら顔をのぞかせ、
「よっ、じいさん、乗っけて行こ
うか?」
「いや、いいよ。町長さんは仕事
が忙しいじゃろ」
「そうでもないよ。俺は役に立た
ないから。みんな仕事を俺にやら
せないようにさっさと片付けちゃ
うんだ」
「あんた、町長を辞めるって言う
たそうじゃの」
「だって、向いてないもん」
「ほら、これ見てみい」
佐吉は持っていた木箱に挿し木
をしているのを見せた。
「へぇ、小さい葉が出てるじゃ
ん」
「あのケヤキの子じゃよ。あの樹
も元はこうじゃたんじゃよ。ずっ
と辛抱してあそこまで大きくなっ
たんじゃ」
佐吉はケヤキを切るずっと前か
ら挿し木をしていたが、なかなか
育たなかった。それが、あのケヤ
キを切った後、枯れていると思っ
た枝を試しに挿し木にしたら育ち
はじめた。
「分かった。じいさんが言ってた
樹を死なせんために切るって、こ
のこと」
「そうじゃ、あの樹がずっとあそ
こにあったら厄介もの扱いされる
だけじゃ。けど、こうして子を別
の所に植えてやりゃ、いつまでも
生き続けることができる」
「あの樹も人の気づかないところ
で役に立ってたもんな。大昔に宇
宙から来て死んだ旅人を守ってた
んだろうね」
「そうじゃ、でもそれを自慢せん
ところが樹のいいところじゃ。あ
んたもな」
「からかわないで下さいよ。じゃ
行きます」
「あぁ、気いつけて」
翔太はレッカー車を走らせ町民
の苦情を聴いて回った。
そのレッカー車だが、燃料を一
切必要としない未知の装置で動い
ていた。
おわり