タタリアン
 黒焦げの自動車はいまだに行方
知れずだったが、この事故がきっ
かけで伐採計画がまた町議会で議
論された。
 今回は反対する者も少なく、実
行される見通しとなったが、地元
の造園業者は依頼を断り、誰が伐
採するのかで難航した。
 しばらく伐採する業者を募集
し、樹にはこれ以上事故が起きな
いように、近くの神社から神主を
呼び、祈祷することになった。
 ところが祈祷する日になると激
しい雷雨になり、延期すると次は
台風がやって来て、また延期とい
う具合だった。
 やっと天気もよくなり、祈祷の
準備も整ったと思ったら、町長が
病気になり入院した。
 これに恐れをなした神主が祈祷
することを断り、タタリの不安は
消えなかった。

 ある夜。
 町長が入院している病院の周り
を、あの黒焦げの自動車を牽引す
る謎のレッカー車が不気味に通り
過ぎた。
 その時間に町長は、容体が急変
し息を引取った。

 奇怪な町の噂はすぐに広まり、
急きょおこなわれた町長選挙で
は、立候補する者がなかなか現れ
なかった。
 たまたま町役場に印鑑証明を取
りに来た27歳でニートの青矢木
翔太が町役場に務めていた知り合
いに薦められて、なんとなく立候
補し、他に立候補者がなかったた
め無投票当選してしまった。
< 2 / 63 >

この作品をシェア

pagetop