眠りの森のシンデレラ
午後五時、榊原邸に着くと、既に来ていた裕樹と金成が出迎える。
「フーン、収まるところに収まったんだ」
裕樹は驚きもせず、則武と桔梗に目をやり、「おめでとう」とニコリと笑い、桃花に話し掛ける。
「今日は一段とお姫様だね。ベビーピンクのフワフワドレス、とっても似合うよ。可愛い」
「うん! ……あっ、はい。おじちゃんに買ってもらったの」
桃花はモデルのようにクルッと一回りし、ドレスの裾を持ち、ペコリとお姫様のお辞儀をする。
「こら、裕樹、桃花の側に寄るな、汚れる、シッシッ」
則武が桃花を隠すように抱っこする。
早くも親バカだね、と裕樹は苦笑する。
「琶子、昨日は行けなくてすまなかったな」
「金ちゃん、長期出張、お疲れ様でした。大丈夫ですか?」
琶子は疲労の色濃い金成を心配し、今日は飲み過ぎないように、と釘を刺す。
そこへ赤いチョッキに黒い蝶ネクタイ姿のボーイが、色とりどりのカクテルの乗ったトレーを差し出す。
「金ちゃんはノンアルコールで!」
「琶子、お前もだ!」
昨夜の琶子を思い出し、清が慌てて口を挟む。
「それにしても、琶子ちゃんも桔梗さんも、今夜は綺麗だね」
「コイツはいつも綺麗だ!」
「琶子はいつも可愛いぞ!」
則武と清は、お前の目は節穴か、と裕樹を睨む。