眠りの森のシンデレラ

「……というわけで、提携しました。私たち」

薫がニッコリと笑みを浮かべる。

少し遅れて琶子とリビングにやって来た清は、いきなりまとまった提携話を興味なさげに聞き、一つ質問をする。

「お前たち、結構仲悪くなかったか?」
「あらっ、昨日の敵は今日の友、呉越同舟。仲良きことはいいことでしょう」

薫がニヤリと笑い「ねー」と裕樹に同意を求め、二人は頷き合う。

「まっ、そうだ、仲良きことはいいことだ。ということで、俺と琶子は今日籍を入れる」

ハーッ! 新年早々、食卓に大爆弾を落とす清。

早朝、海外出張から戻った金成は、中途半端な欠伸をしたまま、目を点にする。

だが、ここで一番驚いたのは当事者の琶子だ。

「榊原さん、何言っているんですか!」
「お前こそ何を言っているのだ? 承諾したじゃないか」
「って、いくら何でもさっきの今って、早過ぎます!」

琶子の抵抗に、清はシレッと宣う。

「お前の気が変わらぬうちに手を打っておきたい。契約は伸ばせばフイになる場合が多い」

オイオイ、それは仕事で言う台詞だろ、と則武、裕樹、金成は、残念な男を見るような目で清を見、深く溜息を付く。

「とにかく、ちょっと待て。市之助氏に報告が先だろ」

金成が至極真っ当な意見を述べる。
そうだ、そうだ、と則武と裕樹も加勢する。

「そうです。榊原さん、順序はちゃんと踏みましょう!」

流されてなるものか、と琶子も強く賛成の意を唱える。

< 219 / 282 >

この作品をシェア

pagetop