眠りの森のシンデレラ
ちっ、近い! 琶子は慌てて身を引こうとするが、清の手がガシッと肩を捉え距離は縮まるどころか、より密着する。
「キャッ、やだ貴方たち何なの!」
間近で見ていた薫が驚愕の声を張り上げる。
途端にその場の雰囲気が不穏色に変わる。
「こらぁ! 清、琶子から手を離せ!」
「清、何をやっているんだ! それ、お前のキャラじゃないだろ!」
「僕の琶子ちゃんに何するんだ!」
金成の怒号が空を切り裂き、則武は大切な交渉相手に何をする! と青い顔で走り寄り、祐樹も憧れの君を守らねば! と脱兎の如く駆け寄った。
騒がしい大人たちの中、桃花が疑問を呈する。
「ねぇ、登麻里ちゃん、琶子っていつ彼氏作ったの?」
「覚えておきなさい。恋ってこういうものなのよ」
登麻里は落ち着いた様子で答える。
そして、いつものように桃花専属ラブ・コラムニストになる。
「ある日突然始まるの。桃花もその時がいつ訪れてもいいように素敵なレディーでいましょうね」
二人はストローでチューチューとレモネードを飲みながら、まったりと成り行きを楽しむ。
「ちょっ、ちょっと何をしているんですか……!」
琶子は清の手を払い除けようと、その手をペチペチ叩く。
「何って、交際が始まったのだから、これぐらい、当然の行為だと思うが」
「はい?」
琶子は目を丸くして清の顔を見上げる。
「交際!」
則武と祐樹は二人同時に声を張り上げる。