甘い恋じゃなかった。




というわけで、あっという間に時は流れ、今日は花火大会、当日。



窓を開けると夏の強い日差しと共に、セミの鳴き声がうるさく部屋に飛び込んできた。



うーん、夏だ!!





花火大会は18時半から。


桐原さんは仕事を途中で抜けてくるようだ。


その前に部屋の掃除とか洗濯とか、やるべきことをチャッチャと終わらせてしまおう。



よし、と気合をいれて、髪をササッと一つに結ぶ。



やっぱり何だかんだ、当日になると結構楽しみだったりする。



久しぶりかもしれない。夏っぽいことするのって。










そして18時半。



桐原さんとは会場近くのコンビニで待ち合わせ。

なんだか変な感じだ。桐原さんと外で待ち合わせするのって。




コンビニ前に行くと、だるそうにスマホをいじっている桐原さんをすぐに見つけた。




桐原さん、と駆け寄りそうになって、思わず足を止める。




だって周りの女子たちの視線を一身に集めているんだもん。



キャーッと分かりやすく騒ぎ立てている女子グループに、頬を赤らめこっそりと桐原さんを見つめている女子。その隣にいる彼氏と思われる男子が、あからさまに面白くなさそうな顔をしている。



なんて罪な男なんだ…“ポンジュース”と書かれた謎のオレンジTシャツなんて着ているくせに…!



どうやらダサい服もイケメンの前には無力のようだ。



そんなことを痛感しながら、私は「お待たせしました」と桐原さんに声をかけた。




< 136 / 381 >

この作品をシェア

pagetop