甘い恋じゃなかった。
「じゃ、次はコレだな」
そう言って桐原さんが今度は抹茶のティラミスを手に取る。
「あぁっ!それ私も狙ってたやつ!」
「ふーん。じゃまた半分こ、するか?」
二、と意地悪く笑う桐原さん。完全にからかっている。
「…じゃぁ今度は私が先に食べます」
「はぁ?何でだよ」
「いいから貸して下さい!」
抹茶のティラミス目掛けて手を伸ばすと、ヒョイ、と上に躱された。
膝立ちをしてもう一度手を伸ばそうとした時、グラリと崩したバランス。
「っわ…!」
ドサ、と倒れこんだのは桐原さんの胸の中。というのに気付いたのは、彼の服越しに、たしかな温度を感じた時だった。
今の体勢。
桐原さんがソファを背もたれに寄りかかり、そんな彼に私が抱き着いているようだ、まるで。
カ、と顔に熱が集中した。
なんだか体の線がジンジンする。
「ごっ…ごめんなさい!!」
慌てて退こうとしたら、グイ、と手首を引っ張られて再び胸に顔を押し付けられた。
自分じゃない誰かの温度。
私は何が起こっているのか分からなくて、ただ固まってしまう。
手首はまだ、つかまれたままだ。
…今、何が起こってる?